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小林秀雄の言葉 ( その52 ) [小林秀雄]

 文字の数がどんなに増えようが、 僕等は文字をいちいち辿り、 判断し、 納得し、 批評さえし乍ら、 書物の語るところに従って、 自力で心の一世界を再現する。 この様な精神作業の速力は、 印刷の速力などと何んの関係もない。 読書の技術が高級になるにつれて、 書物は、 読者を、 そういうはっきり眼の覚めた世界に連れて行く。 逆にいい書物は、 いつもそういう技術を、 読者に眼覚めさせるもので、 読者は、 途中で度々立ち止り、 自分がぼんやりしていないかどうか確めねばならぬ。 いや、 もっと頭のはっきりした時に、 もう一っぺん読めと求められるだろう。 人々は、読書の楽しみとは、 そんな堅苦しいものかと訝るかも知れない。 だが、 その種の書物だけを、 人間の智慧は、 古典として保存したのはどういうわけか。 はっきりと眼覚めて物事を考えるのが、 人間の最上の娯楽だからである。       「 読書について 」 11-八七 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.77)
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