小林秀雄の言葉 ( その12 ) [小林秀雄]
見るとか聴くという事を、 簡単に考えてはいけない。 ぼんやりしていても耳には音が聞こえて来るし、 特に見ようとしなくても、 眼の前にあるものは眼に見える。 耳の遠い人もあり、 近視の人もあるが、 そういうのは病気で、健康な眼や耳を持ってさえいれば、 見たり聞いたりすることは、 誰にでも出来る易しいことだ。 頭で考えることは難しいかもしれないし、 考えるのには努力がいるが、 見たり聞いたりすることに、 何の努力が要ろうか。 そんなふうに、 考えがちなものですが、 それは間違いです。 見ることも聞くことも、 考えることと同じように、 難しい、 努力を要する事なのです。
「美を求める心」 21-二四四 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.176)
「美を求める心」 21-二四四 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.176)
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