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小林秀雄の言葉 ( その41 ) [小林秀雄]

 非常時の政策というものはあるが、 非常時の思想というものは実はないのである。 強い思想は、 いつも尋常時に尋常に考え上げられた思想なのであって、 それが非常時に当っても一番有効に働くのだ。 いやそれを働かせねばならぬのだ。 常識というものは、人々が尋常時に永い事かかって慎重に築き上げた思想である。  「 支那より還りて 」 10 - 一七〇   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.66)
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小林秀雄の言葉 ( その40) [小林秀雄]

「 私の眼は光っている。 だが私の心は暗いのだ 」 とチェホフが 「 手帖 」 のなかに書いていたのを昔読んだ事がある。 折にふれて心のなかに又新しく幾度でも甦る言葉というものがあるものだが、 僕にとってはそういう言葉の一つである。 僕の様な眼でも幾分ずつでも強く光って来る事は出来るのだ。 いや自ら努めて出来る事はそういう事だけだ。 併し心を明るくする事は出来ない。 そんな方法はないのである。  「 雑記 」 10 - 一二六   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.66
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小林秀雄の言葉 ( その39 ) [小林秀雄]

 恋愛とは、 何を置いても行為であり、 意志である。 それは単に在るものではなく、 寧ろ人間が発見し、 発明し、 保持するものだ。 だから、 恋愛小説の傑作の美しさ、 真実さは、 例外なく男女が自分等の幸福を実現しょうとする誓言に基くのである。      「 志賀直哉論 」 10 - 一0八   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.66)
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小林秀雄の言葉 ( その38 ) [小林秀雄]

 僕等はいつも知らず識らず愛情によって相手をはっきり掴んでいるのだ。 成る程、 僕等は相手を冷静に観察はするが、 相手にほんとうに魅力ある人間の姿を読む為には、 観察だけでは足りない。 愛情とか友情とか尊敬とかが要るので、そういうものが観察した人間の姿を明らかに浮びあがらせる言わば仕上げの役目をする。      「 志賀直哉論 」 10 - 一0五   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.66)
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小林秀雄の言葉 ( その37 ) [小林秀雄]

 人生を解釈する上に非常に便利な思想というものは、 その便利さで身を滅ぼす。 便利さが新たな努力を麻痺させるからだ。
   「 志賀直哉論 」 10 - 一0一   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.65)
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小林秀雄の言葉 ( その36 ) [小林秀雄]

 肉体の病人は、 ごく軽い病人でも、 健康を切望するものだが、 精神の病人は、 いくら精神が腐って来ても、 それに気が附かないだけの口実は用意する・・・・・・
   「 志賀直哉論 」 10 - 九五   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.65)
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小林秀雄の言葉 ( その35 ) [小林秀雄]

 眼の前に一歩を踏み出す工夫に精神を集中している人が、 馬鹿と言われ、 卑怯と言われ乍ら終いには勝つであろう。 四百年も前にデカルトが 「 精神には懐疑、 実行には信念を 」 という一見馬鹿みたいな教えを書いた。 人々は困難な時勢にぶつかって、 はじめてそういう教えに人間の智慧の一切がある事を悟るのであるo
  「 文芸雑誌の行方 」 10 - 八八   小林秀雄 (人生の鍛錬 P.64)
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小林秀雄の言葉 ( その34 ) [小林秀雄]

 現代の言語が非常に乱れているのは周知の事だが、 一般生活者には言語が乱れていようがいまいが問題は起らぬ筈である。 何故かと言うと言語という社会の共有財産は、 幾時の時代でも社会の生活秩序と喰い違わない様に出来ているからだ。 混乱した社会に生活する人々は混乱した言葉を使っているのが一番便利なのである。
   「 言語の問題 」 7 - 一九九  小林秀雄 (人生の鍛錬 P.53)
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小林秀雄の言葉 ( その33 ) [小林秀雄]

 今日の若い作家達の教養の貧弱さは覆うべからざるものだ。 然し被等が教養の摂取を怠っている訳ではあるまい。 彼等の教養には、 教養を円熟させる何物かが欠けているのである。 例えば一時代前の作家が持っていた古典的趣味という様なものは、 作家の教養を成熟させる或る何物かであった。 以て教養を蓄積し、 以て蓄積された教養の開花を期するという、 言わば教養の根を、 今日の若い作家達は失って了ったのである。
   「 若き文学者の教養 」 7 - 一五一    小林秀雄 (人生の鍛錬 P.53)
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小林秀雄の言葉 ( その32 )  [小林秀雄]

 僕の接する学生諸君に、 愛読書は何かと聞いて、 はっきりした答えを得た事がありません。 愛読書を持つという事が大変困難になって来ています。 様々な傾向の本が周囲にあんまり多すぎる。 愛読書を持っていて、 これを溺読するという事は、 なかなか馬鹿にならない事で、 広く浅く読書して得られないものが、 深く狭い読書から得られるというのが、 通則なのであります。
   「現代の学生層」 7 - 一四四 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.52)
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小林秀雄の言葉 ( その31 )  [小林秀雄]

 実生活を架空の国とするのは、 何も実生活を逃避する事を意味しない。 逃避しょうとしても附纏うものが実生活というものだからだ。 例えば実生活中の最大事件たる死というものを人間はいかにしても逃避出来ない事を考えてみればよい。 その意味で死は実生活の象徴である。 若し人間に思想の力がなかったならば、 人間は死を怖れる事すら出来ないのである。 というのは思想は死すら架空事とする力を持っているという証拠である。
   「文学者の思想と実生活」 7 - 一三一 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.52)
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小林秀雄の言葉 ( その30 )  [小林秀雄]

  神経質で、 敏感で、 いつも自分がいい子になりたいと思っている奴は、 時とすると実によく相手の心持ちを見抜くものだ。 然し、 自分に関係のない事柄、 つまり、どっちにしたつて自分はいい子になってられるという場合には、 恐ろしく鈍感になるものだ。
  「批評家失格Ⅱ」3-35 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.26)
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小林秀雄の言葉 ( その29 )  [小林秀雄]

 ただ鑑賞しているという事が何となく頼りなく不安になって来て、 何か確とした意見が欲しくなる、 そういう時に人は一番注意しなければならない、 ある意見を定めて鑑賞している人で、 自分の意見にごまかされていない人は実に稀です。 生じっか意見がある為に広くものを味う心が衰弱して了うのです。 意見に準じて凡てを鑑賞しようとして知らず知らずのうちに、 自分の意見にあったものしか鑑賞出来なくなって来るのです。 いろいろなものが有りのままに見えないで、 自分の意見の形で這入って来る様になります。 こうなるともう鑑賞とは言えません、 ただ自分の狭い心の姿を豊富なな対象のなかに探し廻っているだけで、 而も当人は立派に鑑賞していると思い込んでいるというだらしのない事になって了います。
   「 文学鑑賞の精神と方法 」 について 5 - 二四三 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.43)
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小林秀雄の言葉 ( その28 )  [小林秀雄]

 文章を鑑賞するとは、 文章の与える印象を充分に享受するという事です。 これは文章を作ったり、 文章を批評したりする仕事からみると一見受身なたやすい事のように思われますが、 決してそうではない。 鑑賞は鑑賞で充分むずかしい一つの仕事であります。
   「 文学鑑賞の精神と方法 」 について 5 - 二四一 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.42)
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小林秀雄の言葉 ( その27 ) [小林秀雄]

 どんな強い精神力も境遇を必ずしも改変し得ないが、 強い精神力が何かのかたちで利用出来ぬほど絶望的な境遇というものは存しない・・・・・・
   「 白痴 」 について 5 - 一六二 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.42)
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小林秀雄の言葉 ( その26 )  [小林秀雄]

 関心することを怠りなく学ぶ事。 感心するにも大変複雑な才能を要する。 関心する事を知らない批評家は、 しょっ中無けなしの財布をはたいている様なものだ。
  「 断想 」 5 - 一五三 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.42)
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小林秀雄の言葉 ( その25 ) [小林秀雄]

 諸君がどれほど沢山な自ら実行したことのない助言を既に知っているかを反省し給え。 聞くだけ読むだけで実行しないから、 諸君は既に平凡な助言には飽き飽きしているのではないのか。 だがそ何か新しい気の利いたやつが聞きたくてたまらないのじゃないか。
  「作家志望者への助言」 4 - 一二〇 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.38)
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小林秀雄の言葉 ( その24 ) [小林秀雄]

 実行をはなれて助言はない。 そこで実行となれば、 人間にとって元来洒落た実行もひねくれた実行もない、 ことごとく実行とは平凡なものだ。 平凡こそ実行の持つ最大の性格なのだ。 だからこそ名助言はすべて平凡に見えるのだ
  「作家志望者への助言」 4 - 一一九 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.37)
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小林秀雄の言葉 ( その23 ) [小林秀雄]

 文学志願者への忠告文を求められて菊池寛氏がこう書いていた。 これから小説でも書こうとする人々は、 少くとも一外国語を修得せよ、 と。 当時、 私はこれを読んで、 実に簡明的確な忠告だと感心したのを今でも忘れずにいる。 こういう言葉をほんとうの助言というのだ。 心掛け次第で明日からでも実行が出来、 実行した以上必ず実益がある、 そういう一言葉を、 ほんとうの助言というのである。
  「作家志望者への助言」 4 - 一一九 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.37)
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小林秀雄の言葉 ( その22 ) [小林秀雄]

 思想のモデルを、 決して外部に求めまいと自分自身に誓った人、 平和という様な空漠たる観念の為に働くのではない、 働く事が平和なのであり、 働く工夫から生きた平和の思想が生れるのであると確信した人、 そういう風に働いてみて、 自分の精通している道こそ最も困難な道だと悟った人、 そういう人々は隠れてはいるが到る処にいるに違いない。 私はそれを信じます。
  「私の人生観」 17 - 一九六 小林秀雄 (人生の鍛錬 P.143)
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